2009年01月07日

12 夢と現実の違いは裸であるかそうでないかの違いに似ている


 
 
 八月の終わりの西に傾きかけた日光が教室の窓から差し込んできて、ぼくの身体は明るいオレンジ色に照り返っていた。一番前に座っていた聖子の方に向けて勃起させているむき出しのペニス。その先端できつく結んだ口先からは粘液が溢れ出し、裏返った亀頭から肛門にまで伝い、汗と一緒に太ももを滴り落ちていた。ぼくは自分のペニスがドクドクと自律的に脈動してくるのを両股の筋肉できつく締めつけて、今にも射精しそうなのを歯ぎしりしながら堪えていた。自分の性器は目の前にいる聖子にだけ見られていると思っていた。そんなことはあり得ないことなのに、皆の前で勃起していたぼくは、聖子にだけそれを見られていると夢想していた。しかし、夢を見ていたのではないかと錯覚するような現実は、実は、覚醒するまで続く悪夢だったのだと気付いたのは、先生が近づいてきてそれを間近で眺め、ぞっとしたような顔をしたときだった。先生は、女生徒の木炭紙の上に描かれたデッサンとモデルの実物とを見比べたのだ。二人の様子を遠くから見ていた先生は聖子に近づき、彼女が描いていたデッサンを眺めた。そして、そのデッサンに描かれたモノを確認するためにわざわざぼくに近づき、それを間近で見て確認したのだ。そのとき先生は、ぼくの丸出しの男根が、目の前にいる女生徒に視られて興奮していることを知った。だから先生はぞっとしたような顔をしたのだ。
 ビーーーーーーーーーーーー。
 けたたましくタイマーのベルが鳴った。それは、立ちポーズの長い一時間が終了したのと同時に、昼過ぎから始まった今日のデッサン会もこれで全部終了したことを告げていた。
「はい、今日はこれで終わりよ。お疲れ様でした」
 先生は二人を無視するように皆の方を向いて言った。
 目の前にいる聖子は、目を丸くしたまま、まだぼくを見つめていた。
 一巻の終わり。
 ぼくは裸のまま、固まって動かなくなっていた左脚を両手で持ち上げた。太ももの筋肉が痺れていた。息ができないくらい疲れていた。硬直したペニスはまだ勃起したままだったので、背中を丸めて後ろを向き、両手でそれを押さえた。
 そのとき急に眩暈がしてきて、台の上に敷いてある柔らかい毛布の上に倒れ込んだ。頭を抱えて膝を曲げ、尻を上げたまま、しばらく動けなかった。視界が白くなり、教室のざわめきが遠退いていった。
「だいじょうぶ?」
 後ろから先生の声が聞こえた。
 勃起した男根をぶら下げた尻を皆に向けたまま、うずくまっている自分に気付いた。後ろから先生がぼくを覗き込んでいる。慌てて台の上から飛び降りた。
 大丈夫です、ちょっと眩暈がしただけです、と言おうとしたが、言葉が出ない。勃起したまま痺れているペニスを両手で押さえて、先生の前に立った。
「だいじょうぶ? ちょっと休んだら」
「あ・・あの・・」
 声帯が振動しない。言葉が浮かばない。
 ぼくは全裸のまま教室を出て、裸足で廊下を走り、控え室に戻った。

 カーテンの奥の椅子の上には、丸めた白いTシャツとブルージーンズが置いてあった。ついさっき、ここで脱ぎ捨てた衣服。再びそれを着ることによって、肉体を理性に従属させ、性を人目から隠匿するための衣服。汗も拭かずに、ぼくはただ「現実の社会的諸条件への無気力な従属だけ」が残されているように感じながら、Tシャツをかぶり、ジーンズを履き、まだ勃起したままのペニスをしまい込んで、チャックを閉めた。
 そのとき先生の声が聞こえた。
「だいじょうぶ? もういいかしら?」
「あっ、はい・・」
 やっとの思いでそう答えるのが精一杯だった。
 服を着ると、逆に奴隷に戻ったように自由を失って、言葉で自分を武装しなければならない日常に再び拘束されてしまったように感じた。
 先生が中に入って来た。
 いったい何しに来たのだろう。
「脚がつっちゃったの? 初めてだから、大変だったでしょう?」
 先生がぼくを変な目で見ないのが不思議だった。何事も無かったかのように、当たり前の言葉をぼくに語りかけてくる。彼女は、テープレコーダーを再生しているだけのロボットなのかもしれない。
 ぼくは今にも心のバランスを崩して発狂しそうだった。
 先生はぼくの目を見て、「だいじょうぶ?」と言い、小さな声で、「とってもよかったわよ」と付け足した。
 ぼくは死人のように体を硬直させたまま、ずっと夢想していたのだ。 裸で、ペニスまで丸出しにしたまま、思い出していた。パレスチナの地でゴリアテを投石器で倒したダビデはペリシテ人を征服してイスラエルという“神の国”を建国した。そのダビデが共和制の象徴として全裸でペニスまで出したまま、ルネッサンスのフィレンツェの広場に立ったとき、富める者の手に渡ったキリスト教の権威は、性をもはや隠匿してはいなかった。しかし、礼拝堂を全裸の男女で埋め尽くしたミケランジェロですら、あのエロティックなダビデ像のペニスを勃起させはしなかった。それなのにぼくは、公の教室の中で生身のペニスを勃起させていた。それが性の解放によるユートピアの実現の象徴でもあるかのように、それを上に向けていた。でも今はもう、衣服を着た姿で先生の前に立っている。さっきまでの全裸のぼくがまるで異常だったように、今、ぼくはそれを隠匿することが当たり前のように、ジーンズを穿いて先生の前に立っている。しかし本来男女は裸のはずだ。それなのに文明社会では、どうして未だにお互いの裸を隠蔽し合っているのだろうか。それを不思議に思わない先生が不思議だ。先生はそれを知っていて知らないふりをしているのだ。衣服を着た先生の発する言葉が心にもない絵空事を喋っているように聴こえてくる。
 でも、やはり先生は、記憶の中で、さっきのぼくの姿を想像している。そんな目つきで、黙っているぼくを上から下に見下ろす。
「あなた随分固くなってたみたいね」
 やはりそうだ。硬くなっていたのはぼくのペニスだ。ぼくが黙っているのが気に入らないから、そんな皮肉を言ったのだ。ぼくを冷たく侮辱して、復讐しようとしているのだろうか。聖子と二人だけで黙って性的な関係を愉しんでいたことに嫉妬しているから、ぼくを侮辱したいのか。でも、すぐに先生は言葉を言い換えた。
「あんまり一生懸命やってくれたので、びっくりしたわ」
「え?」
 一体ぼくは何を“やった”のだろうか。それに、いったい何が“よかった”のだろうか。言葉が抽象過ぎて何もわからない。いや、主語が抜けているから、本当は何が言いたいのかわからない。
「あなた、もうだいじょうぶ?」
 いったい何が大丈夫と訊いているのだろうか。わからないから、曖昧に答えた。
「こんなの初めてだったから・・」
「そうだったわね」ぼくの言葉を肯定するように言ってから「若いのね」と独言のように呟いた。そのとき先生の目が一瞬、好色そうに輝いたように見えた。
 勃起したペニスを間近で見られたことを、否、わざわざぼくの近くまで来てそれを覗き込み、その状態を確認したことを思い出した。でも、今は、さっきまでの興奮した状況がまるで嘘だったように、ぼくはジーンズを穿いた姿で先生の前に立っている。でも、なぜかまた、Gパンの下にきつく隠れているペニスが勃起してきた。
「それにしても・・」
 先生はなにかぼくに言いたそうだったが、その言葉を飲み込んで、領収書の紙切れを差し出した。
「これに名前と住所を書いてくださる?」
 ぼくは急に真っ赤になった。一瞬何がなんだか分からなくなった。自分の住所は今いったいどこなのだろう。
 バランスを崩してそのまま瓦解しそうな記憶が、田口の作った小さな犬小屋同然のビニールハウスの映像となって目の前に現われた。ぼくはそこが自分の今いる住所なのだと思った。ぼくはそこで飼われている犬なのだ。でも、そこの場所に付けられている町名と番号がいくつなのか、ぼくにはまったくわからなかった。
「そういえばあなた、田口さんのところにいるのだったわね」
 彼女はそう言うと、紙切れに目を落とした。
「いいわ、名前だけで」
 ぼくは渡されたボールペンを握って、汚い字でやっと自分の名前を書いた。
 先生はそれをじっと見つめていたが、目を上げて呟いた。
「あなたって、面白いわね」
 鼻の先で笑って、ぼくの目を見た。
 暗黒舞踏家の田口のところに“飼われて”いる“犬”だから、ぼくは“面白い”のか。それとも、デッサンの最中、ずっと勃起していた“変態”だからか。どちらにしろ、彼女がそう思ってぼくを嘲笑しているのなら、領収書を手渡すとき、彼女の手を握ってジーンズのジッパーを開け、押し倒して、ペニスをあなたの口の中に突っ込んでやってもいい。 そう思って先生の唇を見た。紅が塗られた薄い皮膚の上を、細い筋が幾本も走っているのが卑猥に見える。
 ところが先生は、ぼくの手から領収書をひったくるように取り上げると、「ありがとう。またお願いしますね」と言って、お金の入った封筒を差し出した。
 それを受け取ると自分の気持ちが一変した。金を貰うと、まんざら悪い気はしない。なるほど、領収書か。確かにそんな取引をしなければ、この世の経済行為は成り立たないのだな、と、ぼくは一人でそんなことに感心してしまい、先生に何も言えなかった。何もできなかった。でも、またお願いするって、いったい先生はぼくに、何をお願いしたいのだろう。本当はぼくに何を期待しているのだろう。
「田口さんによろしくね」
 また田口か。この女は田口とできているに違いないのに、それだけじゃ飽き足らないらしい。まあいい。あまり見くびるなよ。先生。そんなに気安く懐いて尻尾を振ってついて行くような飼い犬じゃないからな。
 ぼくは何も答えず、そこから出ようとした。すると、彼女は慌てて「今度うちにも遊びにいらっしゃい」と付け足すように言った。
 電話でも同じことを言われたような気がする。いったいどういう意味なのだろう。田口に聞かされたぼくの経歴が変わっているから、今度お話しでもしましょうということなのか。それとも、ぼくの勃起したペニスが気に入ったから、プライベートでも彼女の前で全裸のモデルになれということなのか。それとも、ぼくに秘かに好意を懐いていて(勃起したペニスを見て、それが気に入ったから)、それ以上のことをしましょうと誘っているのか。だったら、今すぐにでもかなえてやってもいい。 そう思って先生を見たが、彼女はすぐにポニーテールの髪を振って後ろを向き、自分から先に部屋から出て行ってしまった。
 ぼくはGパンの尻ポケットに封筒を突っ込み、廊下に出た。
 見るとそこに一人、女の子が立っていた。
 デッサンの最中、こんな子がいることには気が付かなかった。
 ぼくを見ると「・・あのぉ・・」と、聞き取れないくらい小さな声で呼びとめた。
 先生は振り向いて二人を見たが、すぐにそのままつかつかと廊下の先を歩いて行ってしまった。
 ぼくの前にひとり立っている女の子は、ボディーラインがそのまま見えるほど小さなTシャツをきつく着込んでいる。二つの形のいい胸が突き出ていて、ブラジャーの凸凹が、レモンイエローのTシャツの生地の下に透けて見える。
「あのー・・あたし・・」
 Gパンの中で上を向いていたペニスが、さっきよりも硬く勃起してきた。レモンイエローのTシャツには、“SARINIC MARRY”と白い文字で書いてある。ずいぶん過激なTシャツを着ているな、と思ったが、きっとロゴの書体が可愛らしいからこの子はこれを選んだのだろう。その過激なロゴが、ちょうど彼女の胸の膨らみに引っ張られて変形している。 それを見ていると、また膨張してきた亀頭がジーンズを持ち上げ、尿道の先が荒い生地にこすれて濡れた。


 
 
 
 
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2009年01月06日

13 中三の聖バレンタインデーの記憶


 
 
 その瞬間ぼくはふと、中三のバレンタインデーのときのことを思い出した。
 ねえ、ねえ、きみ〜、放課後、体育館の裏に行ってみてねぇ。――え、どうして? ――いいからあ、絶対行くんだよー、わかったぁ? お願いだからさぁ。―― 掃除の時間、同じクラスの女子が近づいてきて言った。バレンタインだから、彼女がぼくにチョコをくれるのかと思った。クラスで一番ませている女子だった。放課後、体育館の裏に行ってみた。するとそこに見たこともない女の子が立っていた。小柄だが、着ている制服の胸が窮屈そうに膨らんでいる。その上には一年後輩の“2―C”と書かれたバッチがとめられている。他の生徒のよりも短い制服のミニスカートが巻かれた腰がツンと上を向いていて、寒そうな太ももが紫色になっている。胸を張ったいい姿勢でぼくの前に立っている小柄な後輩は、恥ずかしそうに上目づかいでぼくを見ている。でも、ぼくは彼女を今まで一度も見た記憶がない。真っ赤になって「先輩、これ」と言って、綺麗にラッピングされた包みを差し出した。ぼくはそれを受け取り、「ありがとう」と言った。その瞬間、彼女は何も言わずに一目散に走り去って行った。翌日、体育館の裏に行ってねと言った同級生の女の子に訊いてみた。いったいあの子だれなの? 一度も見たことないよ。すると彼女は、あたしの後輩よ、と言い、最近転校して来たの、後輩の学年ではもう有名よ、なによー、知らなかったぁ? かわいいから大騒ぎになったんだからー、うそでしょ〜、知らないふりしてー、気があるんじゃない〜? とぼくをからかった。いや、本当に知らないよ、と言うと、きみー、ありがとうって言ったんだって〜、やるじゃない〜、彼女すっごく喜んでたよぉ〜、と、まるで焼きもちを焼いているようにぼくをからかうと、もうそれ以上彼女のことを話すのをやめてしまった。彼女が誰なのか、何年何組の子なのか、ついに分からないまま、いつの間にか彼女のことなどすっかり忘れていた。不思議と学校でもその後一度も顔を合わせなかった。だから、たった一度だけ見た顔さえすっかり記憶から消えていた。ところが、春休みの前日、机の中の物を鞄に入れようとすると、そこにかなりぶ厚い封筒が入っているのを発見した。ぼくはそれをなぜか鞄に入れて家に持ち帰った。そして自分の部屋の中でその封筒を開けてみた。すると中には綺麗な便箋に書かれた手紙が入っていた。――わたしってほんとにドジです。先輩に手袋編んだのに・・。アイロンかけたら焦がしちゃった。あたしの気持ちみたい・・。ゴメンなさい。でも、この手袋送ります。 ❤中田めぐみ――。大きな封筒の中には、真っ白い地に赤いハートの模様を編み込んだ毛糸の手袋が入っていた。赤いハートは、アイロンの跡で真っ黒に焦げていた。きっと、ぼくにチョコレートをくれたあの後輩に違いないと思った。でも、ぼくは彼女に返事も書かなかった。どこに返事を出していいのか分からなかったから。そして、不思議なことにその後一度も彼女と顔を合せなかったから、彼女のことなどすっかり忘れていた。それなのに、なぜか今、そのことを思い出した。

「あのぉ・・今、何してるんですか?」
「・・」
「・・大学、行かなかったんですか?」
「え?」
「・・放浪して死んだって噂、聞いたから・・」
 いったい誰がそんな噂を広めているのだろう。でも、今はそんなことはどうでもよかった。
「あのぉ・・先輩ですよね・・」
 ぼくは中学の後輩が何か言い終わらないうちに「今から遊びにいかない?」と言って、あっけに取られている彼女の腕を掴み、廊下を走りだした。
 もう我慢できない。なんでもいい。どうなってもよかった。
 廊下を曲がると、さっきそっちに曲がった先生の姿はもう見えなかった。そこには男女に別れているトイレの扉があった。男子便所の扉を開けると誰もいない。彼女の手を握ったまま、急いで中に駆け込み、二人で一番奥の大便所のパーティションの中に入って鍵をかけた。
 急いでGパンのジッパーを下ろすと、パンツも履いていないビンビンに硬くなった一物がビックリ箱から飛び出すバネ仕掛けのオモチャのように上を向いて勢いよく社会の窓から飛び出してきた。
 ぼくは、それをジッパーの間から陰嚢まで丸出しにして握り、めぐみに見せた。
「あっ、これっ・・」
 彼女の手をとって、それを握らせると、思わず口走った。
「あっ! やめてください!」
 もう痛くてたまらないほど勃起したペニスを彼女の手に強引に握らせ、その上から生身の性器をしごいた。
 狭い便所の壁に押しつけられ、じとじとした暑い空気の中でペニスを握らされた途端、窒息しそうに喘ぎ始めた後輩は、首まで赤くなって放心したように全身の力が抜けてしまった。赤子のようにぎゅっと目をつぶったまま顎を上げた顔の、ゆがんで半開きになった赤い唇に舌を突っ込むと、後輩の舌は別の舌に嘗め回されて息もできずに額に皺を寄せて喘いだ。無理やり上からペニスを握らされた掌は汗ばんでじっとりと濡れてきた。そのまま固く握られた男根は高校三年生になっためぐみの手の中でさらに硬く熱くなり、無意識にそれをしごいている彼女の汗と一緒になってベトベトになった。
 ぼくは、彼女の甘く匂う汗と湿気でしっとり濡れたレモンイエローのTシャツの上から、透けて見えていたブラジャーを触った。まるでモナカの皮のようなブラジャーの感触の上から、それに包まれた柔らかい胸を掴んだ。
 今ではすっかり大人びた高校生になった中学のときの後輩は性的に興奮して、胸を掴まれ、さすられ、揉まれているうちに、きつく締めつけられていたバストがブラジャーから外れて、乳房が薄いTシャツの下で露わになった。ぼくは汗で湿ったコットンのTシャツの下に手を滑り込ませ、まるでハンペンのようにすべすべしたきめの細かい肌をさすり、ゴムマリのように膨らんだ乳房をTシャツから丸出しにして揉みしだいた。
 まるで餅のように柔らかく、指に冷たく絡みつくパン生地のように膨らんだゴムマリの中央に、剥きエビのように薄い皮膚がネチネチ指先にくっつく乳首を探り当てると、ぼくはそれを、まるでオルゴン・エネルギー発信装置のボタンでもあるかのように、弾力のある乳房に何度も押し込んで、彼女がさらに発情するのを確かめようとした。
 後輩は身をくねらせて抵抗した。そして、口の中で何度も弱弱しくダメダメダメと呟いた。
 それでもぼくは彼女を片腕で抱いて、もう一つの手でしつこく呼び鈴のボタンを押し続け、女の欲情の本性を、閉じられた羞恥心の扉から呼び出そうとした。
 すると急に、後輩の乳首はカラをむいたばかりの茹でたウズラの卵のようにツルリと勃起して、ボタンを押し込んでいたぼくの人差し指の腹を持ち上げた。それと同時に、彼女は荒い息をしながら低いうめき声をもらした。そして、まるでボツボツした突起をこそぎ落とすために、あら塩をまぶしてキュウリもみをするかのように、ぼくの硬く長く伸びたペニスをきつく手で握り締め、以前よりも力を入れて必死になってしごき始めた。
 眉間に皺をよせ、目をつぶってぼくのペニスをしごいているめぐみの顔を見ていると、まるで苦行をさせられている尼のようだと思った。女子高生は、汗と涙でぐちゃぐちゃになった顔をしかめて、泣きながら苦役に服している。何度もしごかれるうちに、だんだんと後輩に強く握られた男根は痺れてきて、気が遠くなってきた。そのときぼくはふと、カリフォルニアのミルバレーで出会った女の子のことを思い出した。いや、カリフォルニアから飛行機に乗って日本に帰ってきて以来、彼女のことを片時も忘れることができなかったマリアという名前の白人のパナマ人。小柄だが、真っ白い顔の、コケティッシュな女の子。金髪のショートヘアーはカールしていて、真っ赤な袖なしのワンピースから出ている真っ白な腕や脚の肌は、象牙のようにきめ細かく光っていた。胸は垂直に膨らんでいて、ぼくよりも一、二歳年上だったマリア。


 
 
 
 
 
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2009年01月05日

14 ジーザスのマザーじゃないマリア



 
 マリアと出会ったのは、ミルバレーのコブラの家だった。ぼくは、カリフォルニアのシャスタ山麓に広がる広大なナショナル・フォーレストの山中にあったコミューンにいた。その山から街に降りてきて初めて泊まったのがコブラの家だった。コブラはミュージシャンで、ミルバレーの大きな自宅には、色々な国のミュージシャンやらカリフォルニアに遊びにきた人達やらが大勢泊り込んでいた。そこで最初にぼくが見た女が、マリアだった。
 キラキラした大きな目の彼女と初めて目と目が合ったとき、彼女はぼくに言った。
「どこから来たの?」
「オン・ザ・マウンテン」
 ぼくが答えた英語を聞いて彼女は声を上げて笑った。
「オン・ザ・マウンテン?」
 明るくケラケラ笑うので、ぼくはもうそれ以上何も言うことができなかった。
「私はパナマから来たの」
「え? パナマ」
「そう」
「名前は?」
「マリア」
「え? マリア?」
「そう。私の名前はマリアよ」
 ぼくはバカみたいにこう言った。
「ジーザスのマザーのマリア?」
「そう。私はジーザスのお母さんじゃないけど、マリアよ」
 ぼくは一瞬にして、もう既に、すっかり恋に堕ちていた。激しく心臓が鼓動し、アドレナリンが全身に巡り、戦闘状態になっていた。
 真っ赤になり、胸苦しくていたたまれず、急に立ち上がって走りだした。
 コブラの家を出て、全速力で闇雲に走った。なぜ走っているのかもわからなかった。
 辺りは大小の丘が連なる牧歌的な風景が続いていた。向こうに大きな山が霞んで見える。その山まで駆け上がるつもりだった。
 丘の斜面を駆け上がると、心臓が今にも破裂しそうになっていた。見ると、そこは牧場で、馬が数頭放牧されていた。ぼくはいつのまにか牧場の柵の中にいたのだ。ぬかるんだ土に足が埋まっていた。
 向こうから牧場主だろうか、大きな男が一人、怪訝そうな顔をして近づいて来た。ぼくは危険を感じて素早く逃げ出した。ぬかるんだ土に足をとられながら、丘の斜面を転げ落ちるように駆け下り、普通の道まで下りた。
 何でこんな所を駆け上がったのだろう。降りてきた丘の斜面を見上げて思った。
 マリアのことを思い出すだけで、また胸が張り裂けそうだった。
 彼女がいるコブラの家には、もう二度と近づくことができず、夕暮れまで街をうろついて回った。
 すっかり日が落ちて、街の外れの大通りまで来ていたぼくは、そこにあったコンビニで、牛乳とビーフジャーキーを買った。寒くなり凍えそうだったので、ビーフジャーキーをかじりながら暖かいコブラの家に戻った。
 腹が空いていた。
 キッチンで買ってきた牛乳を飲んでいると、居間でコブラがエレキ・ギターを弾く音が聞こえてきた。その音を聴いていると、ぼくは思わずうきうきしてきて、飲んでいた牛乳を冷蔵庫にしまい、急いで居間に行った。
 いつの間にか寝泊りしているミュージシャンが集まっていた。エレキ・ギターやベース、キーボード、アコースティック・ギターにタブラやシタール、タンバリンにドラムにコンガ。ありとあらゆる楽器が部屋に置いてあって、みんなそれぞれ好きな楽器を持って即興演奏を始めた。ぼくもそこにあったフォークギターを持って、知っているコードをその場の音に合わせて弾いた。
 演奏がだんだんと盛り上がってきて、歌ったり踊ったりのパーティーになった。
 マリアも自分の部屋から出てきた。でも、彼女は楽器は演奏せず、居間の片隅に座っていた。立てたひざを真っ赤なワンピースのスカートの中に隠したまま、その上に顔を斜めに乗せて、黙ってぼくを見ていた。
 パーティーが終わると、ぼくはキッチンの冷蔵庫からガロン入りの飲みかけの牛乳を取り出して、一気に飲んだ。

 コブラの家の大きな中庭には、直径が四、五メートルもある木製のバスタブが置いてあった。夜になると常時お湯が沸いていて、いつでも誰でも好きなときに、野外でバスタブに浸かることができた。
 中庭は芝生で、様々な植物が生えていた。夜になると満天に星が輝き、まるでメンドシノの山の中にいるようだとぼくは思った。
 屋外には明かりはなく、ガラス戸から漏れるコブラの寝室や、居間に続く廊下の明かりだけが、バスタブのお湯に映っていた。
 大きな野外風呂にぼくがひとりで浸かっていると、ガラス戸を透かして廊下の隅に、マリアがひとりで座っているのが見えた。
 何をしているわけでもない。ただ廊下に黙って座って瞑想でもしているのだろう。
 ぼくはバスタブに浸かりながら、彼女をじっと見つめていた。
 彼女とは「オン・ザ・マウンテン」以外、何も話していない。何か言おうとしても、気の利いた英語の台詞なんて思いつかない。それよりも、あまりにも恋が激し過ぎて、言葉を口に出すことすらできないような気がした。ただ獣のように叫ぶか、犬のように飛びついて抱きしめてしまうだろう。でもそんなことをしたら狂っているとしか思われないだろう。
 実際、ぼくは狂っていたのかもしれない。
 見渡す限り人口の物は一切視界に入らない広大な森林。アメリカ合衆国のナショナル・フォーレストの山中。ぼくは既にそこで、獣になっていたのだ。
 山の中には犬が二匹いた。一匹は大きな茶色いセントバーナードの雄犬リロイ。大人しくて賢い老犬だ。もう一匹は、雑種の蜂蜜色の雌犬ハニー。若いハニーは人に噛み付く狂犬だと言われていた。
 狂犬のハニーを見ても、誰も相手にする者はいなかった。
 彼女はどうやって山の中で暮らしていたのだろう。リロイは人間に可愛がられ、食べ残しなどをもらったり、モンゴル式のヤートの中に入れてもらって、一緒に食事までさせてもらっていた。ハニーは人間に嫌われていて、無視されていたから、ひとりで野生動物のように山を駆け回り、森のリスや小動物を獲って食べていたのかもしれない。
 ただ、山の中でぼくだけは、彼女と遊んだ。狂犬の雌犬ハニーは、ぼくを見るといつも笑ったような顔をして、歯をむき出してまとわりついてきた。ぼくは犬のように腕をばたつかせて彼女をからかった。するとハニーは狂ったように何度も後ろ足で高くジャンプした。ぼくは可笑しくなって、自分も犬の真似をして何度もジャンプして見せた。すると、バカにされていることも知らずに、ハニーは喜んでぼくにじゃれ付いてきた。何度も払いのけたが、彼女は喜んだ顔をしたまま堪忍しない。遊びをあきらめない無邪気さは子供以上に純心だった。ぼくは笑い転げながら、しまいにはハニーを羽交い絞めにして地面に押し倒した。雌犬は必死になってグルグルと唸ってもがき、苦しんで嫌がる表情がまた可笑しくて、ぼくは息が出来ないくらい笑い転げた。ハニーは興奮してぼくに噛み付き、離してやるとまたじゃれ付いてきた。
 獣同士の遊びはいつまでも続き、二人は誰もいない山の地面を転げ回った。
 山で彼女に出会うと、決まってこの遊びを繰り返すうち、いつの間にかぼくと狂犬のハニーは、大の仲良しになっていた。
 ある昼間、遠くの山の斜面にリロイがいるのが見えた。遠すぎて、声も届かない距離。老犬のセントバーナードは豆粒ほどにしか見えない。 ぼくはリロイに向かって心の中で叫んだ。
「こっちに来い! こっちに向かって走って来い!」
 すると、ぼくに気付いたリロイはじっとぼくの目を見つめて、やがて駆けだした。山の斜面を渡り、一目散にぼくのもとに走って来た。
「いい子だな、リロイ。ぼくのテレパシーが通じたんだな。おまえは本当に利口な犬だ」
 ぼくは、リロイを撫で、抱きしめてやった。リロイは喜んでぼくの顔をベロベロ舐めた。
 すると、そこに、ハニーがどこからともなくやって来て、リロイに激しく吠えかかった。野獣の目つきでリロイを威嚇し、突然、二匹は激しいケンカを始めた。
「やめろ! やめろ! 二人とも! やめるんだ!」
 ぼくは必死になって二匹をなだめた。ところが、どんなに叫んでもなだめても二匹はケンカをやめようとしない。しまいには、ハニーに吠えられたリロイは本気になって怒り、野獣の本性をむき出しにしてハニーに吠えかかった。普段はおとなしくて賢いリロイが、本気で怒ってハニーを威嚇した。そんな姿は見たことがなかった。それでもハニーはまったくひるまない。それどころか、大きな老犬のリロイに噛み付いた。
「ハニー! 悪いぞ、お前! なんだってリロイに噛み付くんだ!バカヤロウ! おい、けだもの! 聞いてるのか! やめろって言ってるだろ!」
 どんなに叫んでも、人間の言葉などまったく意に介さず、二匹は激しく憎しみ合って唸り合い、しまいには、噛み付き合いながら狂ったようにグルグルと宙に舞った。
「わかった。わかった。二人ともやめるんだ! ハニーやめろ! わかったから。お願いだ! お前を愛してるよ。ハニー。リロイよりもだ! そう言えば気が済むんだろ! ハニー! だから、もう止めてくれ! もう、そんなに、狂犬のように吠えないでくれ!」
 ぼくは山のことを思い出しながら、廊下に座っているマリアを見つめていた。
 彼女にもテレパシーが通じるだろうか。
 まさか、山の中の犬じゃあるまいし、彼女を呼んでも犬のように来はしないだろう。でも、ぼくは、ハニーよりも、今は彼女のことが好きだった。狂犬のように彼女を欲していた。
 声も届かない距離から、ぼくは真剣になってマリアに向かってテレパシーを送った。
「来い! 来い! マリア。 こっちに来い! このバスタブの中に入って来てくれ! お願いだ!」
 すると、ガラス越しの彼女は、何を思ったのか、いとも簡単にするっと着ていた真っ赤なワンピースを脱いだのだった。
 ぼくは自分の目を疑った。彼女が今、何をしているのか分からなかった。が、明かりが漏れる廊下のガラス越しに、マリアの真っ白な裸体が見えた。
 彼女はガラス戸を空けると、バスタブに向かって歩いて来た。
 きっとぼくが入っていることに気付いていないのかもしれない。
 ぼくは、どうしたらいいのかわからないまま、暖かいお湯に浸かっていた。
 夜だったのと、バスタブの湯気で、明るい向こうのガラス戸から暗闇のこちら側に歩いて来ると、彼女の姿は一瞬、ぼくの目から見えなくなった。
 闇に隠れるように裸のマリアは歩いて来た。そして、突然、姿を現したとき、彼女はバスタブの縁に置いてある台の上に登っていた。
 そのとき初めてぼくは、彼女の裸体をはっきりと視た。小柄だが、白くて丸い胸だけが大きく張り出していて、細い脚が長く伸び、台の上でつま先立っていた。筋肉質のお腹はウエストで細くくびれていた。
 マリアは、ぼくの目を見た。ぼくは無言で彼女の目を見つめ返した。 マリアの表情が真剣になった。次の瞬間、彼女は、躊躇することなく、バスタブの縁を跨いだ。そのとき、ぼくは、彼女の股を見つめた。 ちじれた銀色の陰毛が薄く、陰部が丸出しになって見えた。
 マリアは湯に浸かるとすぐに、恥じることなく、ぼくの手に触れた。
 ぼくにとっては青天の霹靂だった。電流が体中に走り、興奮を抑え切れずに喘いだ。思わずお湯の中に潜って、バスタブの縁を蹴り、向こうの端まで泳いで行った。
 マリアは、ぼくが向こう側に浮上したのを見ると、声を上げて笑った。ぼくのペニスが立っているのが見えたからだ。
 ぼくはいたたまれなくなり、バスタブの縁を跨いで外に出ると、木立の生えている暗がりに隠れた。
 熱くなった体から湯気が上がっていた。
 勃起したペニスをつまんで、その先から湯気の出る小便をした。
 ペニスがビンビンと揺れていた。
 そのまま冷たい芝生の上に寝そべって夜空を見上げた。
 満天の星が無言で輝いていた。
 山の中で見た星と同じだ。
 すると、そこに、マリアがやって来た。
 全裸のまま、そこにしゃがみこむと、脚を開いてオシッコをし始めた。
 ぼくは彼女のしていることが信じられなかった。
 なんだって、こんなに綺麗な子が、男の前にしゃがみ込んでオシッコなんかしているんだろう。
 彼女の顔は見えなかった。下を向いていたのだ。濡れた金髪が縮れていた。
 ぼくは立ち上がった。
 マリアの大理石のように真っ白な背中は、滴り落ちる露に濡れて光り、無防備だった。
 彼女はしゃがんだまま、自分の股間を見つめていた。
 ぼくは冷淡にも彼女を見過ごして、冷たくなった体を温めるため、またバスタブに戻った。
 どうすればいいんだろう。ぼくは湯に浸かりながら、なにも考えられなかった。
 しばらくすると、マリアもまたバスタブに入って来た。
 ぼくはマリアに近付いた。そして、彼女の体に触れた。手で触ったのではない。体と体をそっと接触させたのだ。
 気持ちよかった。
 マリアは、ぼくにキスをした。
 マリアの目は笑っていた。
 立つと腰ほどの高さの湯から出たぼくの勃起したペニスを、マリアは触った。
 暖かく重たく上下に揺れていた。それを手に取ると自分の熱くなたヴァギナにこすりつけた。
 谷間にこすりつけられるペニスは、お湯よりも熱いヴァギナの熱を感じた。

 ペニスをしごいている後輩の顔を見た。
 目をつぶって必死にぼくの性器をしごいて、早く射精させようとしている。
 でも、きつく握られたぼくのペニスは麻痺したように何も感じない。
 マリアは今どこにいるのだろう。
 世界中のどこかにいることだけは絶対確かなことなのに、彼女が今いる場所が世界のいったいどこなのか、ぼくには分からない。だから、地球上を隈なく探し回っても、彼女を見つけ出そう、そのために、また旅に出ようとぼくは心に決めたのだ。
 別れるとき、彼女は朝鮮(コリア)にペーパーマリッジしに行くと言っていた。そうすれば大金がもらえるのだと言って、マリッジしたいからじゃないと、マリアはぼくに強調した。
 彼女は、グラビアのヌードモデルをして金を稼ぎながら世界中を放浪していたのだ。
 ぼくは、そのことを知ったとき、激しい嫉妬を覚えた。きっと彼女のヌードを掲載した雑誌はよく売れるだろうと思った。どんなポーズでカメラマンの前に立つのだろう。カメラマンは喜ぶに違いない。どこまで彼女は自分の裸体を見せるのだろう。きっとアメリカだから、何もかもさらけ出すに違いない。そう思うと、ぼくはどうしようもなく嫉妬し、落ち込んだ。でも、だからこそ余計に、彼女に恋焦がれたのかもしれない。
 なんで彼女はヌードモデルなんてしているのだろう。自分の裸を見られることが快感なのだろうか。それとも金のためにしかたなくそうしているのだろうか。それとも、誰かに無理やりやらされているのだろうか。
 ヌードモデルが嫌になったから、ペーパーマリッジをしようと思ったのだろうか。それとも、誰かから逃げるためにそんなことをするつもりなのだろうか。それとも誰かにだまされているのだろうか。
 ぼくには、彼女の気持ちが解らなかった。
 行きずりの出会いで、すぐに別れた。引き返せば彼女に再び会えたかもしれない、もっと話ができたかもしれない。でも、ぼくは二度と再び彼女に会うことはなかった。
「マリア、マリア、マリア!」
 ぼくは声帯を振動させずに、息だけで何度も叫んでいた。
 カリフォルニアで激しく恋をした彼女の名を。何度も何度も。今でも忘れられない彼女の名を。今でも恋している白人のグラビアのヌードモデルの女の子の名を。世界中を放浪してもまた見つけ出そうと思っている女の名を。
 ペニスを必死でしごいている後輩は、それをぼくのあえぎ声だと思ったのか、自分も息を荒げて赤面しながら、ぼくの口に吸い付いてきた。
 ぼくは後輩の股に手を入れて、きつくそこを覆い隠しているパンティの淵から、陰毛に覆われた股の間に指をしのび込ませた。
 じっとり汗をかいた股の間から、ザラザラと陰毛を伝って、ベトベトになった密壺に指を滑らせ、窮屈な穴の中に指を入れようとした。しかし、後輩は米神から汗を流しながら必死になって抵抗し、ぼくの腕を掴んで引き離そうとした。
 めぐみは体をくねらせ、腰を動かし、ぼくの指を中に入れまいとして股の筋肉を締めつけた。
 コブラの家を出る前日、ぼくは夜、マリアのいる部屋に入ろうとした。すると、中に男がいるのに気付いた。ぼくと同じアジア人だ。ラフな格好をしていない、きちんとしたスーツを着た東洋人が何日か前、数人でコブラの家に来たのを知っている。朝鮮(コリア)から来たと聞いていた。でもそのうちの一人が、マリアの部屋の中に、彼女と二人でいるのを見た。ドアの隙間からぼくは、彼女が全裸で、後ろから犯されているのを視た。
 ジーンズのボタンを外すと、ひざの下までずり落ちてきて、さっきモデルになっていたのと同じように、ぼくの腰は丸出しになった。それと同じように、後輩のインディゴのミニスカートをまくり上げて、パンティを尻から外し、ひざの下まで降ろして、彼女の腰も裸にしてやった。
抵抗していた後輩の手は、無理やりぼくのペニスを握り直されると、今度は自分から、指先でヌルヌルの亀頭を愛撫してきた。そして、自分の股の間の粘膜も、その奥に既に挿入されてしまった指先で愛撫されて、今度は堪忍したように従順に為されるままにされている彼女の性器の中は濡れて、じりじりと熱くなった。
 麻酔をかけられた粘膜が痛みを快く感じるように、指を挿入された粘膜の快感が性的限界に達したのか、それとも、急にこんな所で快感と同時に精神的ショックをも味わわされたことへの復讐なのか。後輩は、暑苦しい男子便所の壁に押しつけられたまま、着ていたレモンイエローのTシャツもすっかりはだけた白い胸をドクドク鼓動させて、夢中で中学のときの先輩のペニスの粘膜を、細い指先で引掻き始めた。
 亀頭の先は濡れてナメコのようにヌルヌルして、後輩の指先がそこを何度もしつこく愛撫してくる口先の小さな割れ目の中に、まるでユリの花びらの先端のように細く尖った爪先が何度も引っかかる痛みを感じた。それが無力な後輩のできる限り最大の復讐なのだと思いながら、さらにぼくはペニスを突き出してやった。
 やがて、女子高生は我慢できない様子で爪先を上げて挿入されている指を引き抜こうとした。それでも、逆に余計にまさぐられ、いじられるので、終いにはその感覚に耐えらないといった表情で目をつぶったまま、感じている触覚に抵抗して、閉じ込められた窮屈なパーティションの中で身をよじらせた。
 マリアは、後ろ向きに四つん這いになって男に金髪を引っ張られながら、乱暴に犯されていた。彼女は苦痛を感じているに違いないと思った。低い声で呻く彼女を見ても、ぼくには何もできなかった。
 下半身を露出させられ壁に押しつけられた後輩の震えるひざが、ぼくのひざとぶつかり、彼女の太ももが、ぼくの太ももに重なってひざを開かれていくのに抵抗しながら、再び舌を突っ込まれた後輩の口は、羞恥心の嗚咽を咽喉の奥から何度も発しながら、欲情の快感に自ら抵抗しているように脚を震わせていた。そして、彼女がついに欲望の限界に耐えられず、必死に閉じていた股の筋肉を緩め、脚を開いて便所の床に自ら丸出しにした腰を落とそうとしたとき、ぼくの性器が彼女の性器に接触した。そのとき二人は我慢できずに、狭い和式トイレの中で、お互いに裸の下半身をよじらせながら、柔らかく湿った穴の中に、ベトベトになって充血しているペニスを挿入させようとしてもがいた。
 お互いの性器が接触し合い、亀頭の先がめぐみのやわらかい粘膜に包まれたとき、急に快感が突き上げてきて、ずっと射精を我慢していた精子が一気に限界に達して勢いよく尿道の先から噴き出してきた。慌てて引き抜いた男根は、何度もビクビク痙攣しながら、先端の小さい穴から、ベトベトの精子をあたり一面に飛び散らせた。女子高生は目をぎゅっとつぶったまま赤面し、精液に濡れた太ももを開いたまま、弱弱しく壁にもたれた。
 ぼくは急いでトイレットペーパーを引きちぎって彼女の濡れた太ももを拭いた。そして、またトイレットペーパーパーを引っ張り出して、精子を吐き出しているペニスの口を塞いだ。
 紙の中でまだドクドク脈動しているピンク色の亀頭が、まだドロドロと熱い精子を気持ちよく吐き出しながら、トイレットペーパーを透明に濡らした。
 そのとき彼女は目を開けて、ペニスを握っていたベトベトの手でぼくに抱きついてきて言った。
「ああ、好き」
 でも、ぼくは咄嗟に唇に人差し指を当てて彼女を黙らせ、巻かれた紙をもう一度引きちぎって、ドロドロになった後輩の手を拭い、丸めて彼女の足元の便器に捨てた。
 銀色の涙の形をしたレバーを足下で踏みつけると、水が轟々と音をたてて流れ、紙と一緒に下水溝の穴の中に吸い込まれていった。
ぼくはジーンズを上げ、ジッパーの中に性器を押し込んでチャックを閉めた。
 後輩は、復讐するような潤んだ目でぼくを見つめ、首筋から汗をダラダラと滴らせて突っ立っている。
 一瞬、目尻からボロッと涙が零れ落ちた。
 半裸にされたまま、全身に汗をかいている後輩は、外れたブラジャーで胸を押さえながら言った。
「せんぱい。誰にも言わないでくださいね」
 ぼくがいったい誰に何を言うというのだろう。ただ自分の性器が精子を飛び散らせただけだ。彼女もそれを望んでいたはずだ。そして、これから自分は、ここから出て行くだけだ。誰も、ぼくと彼女の関係を知る者はいない。ぼくがマリアと別れたように、彼女とも、もう二度と会うことはないだろう。そう思いながらぼくは、尻のポケットに入れたはずの封筒を手で触って確かめた。封筒があることを確認すると、便所の鍵を開けた。
「せんぱい。もう行っちゃうんですか・・」
 自分はどこにも行きはしない。ただ、これから、隷属すべき規範に戻り、従順さを演じるだけだ。
 ぼくは、小さな声で「ごめんね、またね」と彼女に言った。
 後輩はパンティをたくし上げ、潤んだ目でぼくを見ながら、育ちがいい家庭で教育されたのだろう、律儀に目を伏せてお辞儀をした。
 彼女をパーティションの中に残したまま、ぼくは洗面台の所へ行き、蛇口を捻った。勢いよく流れる水で、ベトベトしている手を洗った。
 そのとき、彼女が口ずさむ歌が便所の中に小さく響いてきた。
「あーああ、あああーあ」
 何を歌っているのかわからない。どうして彼女が歌い始めたのかもわからない。ただ、その歌声を聴いていると、いつかずっと昔、どこかで聞いたことのあるような懐かしさを感じた。それは、なぜか、小さい頃、母親が歌ってくれた子守唄に似ているような気がした。
 中学のとき、めぐみがぼくに編んでくれた毛糸の手袋。それはアイロンで真っ黒にこげていた。それを思うと、なぜかいたたまれない気持ちがしてきて、胸が痛くなった。
 洗面台の上の鏡を見ると、そこにはぼくの真っ黒な瞳が映っていた。でも、そこにあった顔は、今まで一度も見たこともないような、他人のような顔に見えた。(自分の顔を、他人のように見つめている自分がそこにいた。)
 ぼくは慎重に、誰にも気付かれないように、男子便所から外に出た。
 Gパンのポケットに両手を突っ込み、小走りで廊下を走りながら、徐々にスピードを上げ、冷静に、しかも素早く学校から外に走り抜けた。

 空の下に出ると、陽は既に傾いていた。
 全速力で走ったので、脚がガクガクして、下腹部に痛みを感じた。
 息も切れてノドがカラカラになり窒息しそうだった。

 もうここまで来れば大丈夫だろう。そう思って立ち止まると、全身から汗が噴き出してきた。
 ゼーゼーいいながら、唾を飲み込んで一息つくと、先生から渡された封筒の中身を確かめようと思いついた。
 封筒を開けると、そこには札が一枚だけ入っていた。
 よく見るとそれは千円札だった。
 こんなはずはないと思った。
 なにかの間違いだ。そうでなければいったい今までぼくがしたことは何だったのか。
 侮辱されているように感じた。
 道路に唾を吐いた。
 もう一度中身を確かめようと思い、封筒の中を覗いた。
 するとそこに、小さなメモ紙が入っているのを発見した。
 綺麗に二つに折り畳まれた紙を開くと、そこには小さな字で丁寧に、住所と電話番号が書いてあった。
 ぼくは、先生の意図的な悪意を感じた。きっと先生は知っていてわざとそうしたのだ。
 ぼくは千円札を握り締め、ゆっくりと歩き始めた。


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posted by hoshius at 05:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 狂犬革命 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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